ジム・クエスキン&サモア・ウィルソン福岡公演

ジム・クエスキン&サモア・ウィルソン福岡公演
2015年6月15(月)会場:ゲイツセブン

出演者:
ジム・クエスキン(ボーカル、ギター)
サモア・ウィルソン(ボーカル)
井上太郎(マンドリン)
岩見継吾(ベース)
近藤哲平(クラリネット)

前座:
マドカ・プレイボーイズ

 

1960年代の初頭のジャグ・バンド・リヴァイバルの立役者ということ以外にほとんど何も知らないまま臨んだJim Kweskin & Samoa Wilsonのライブ。予習として聴いた音源も、たまたま中古レコード屋で見つけた「Jim Kweskin`s America」のみ。このCDを聴く限りでは、酒を片手にリラックスして楽しめるライブになるだろうと思っていたのだけれど…。

前座を務めたバンドは地元福岡のMADOKA Playboys。3年ぶりにこの日限りの再結成をしたのだそうだ。登場した時の拍手から、会場にいる観客も彼らを歓迎している様子があった。

そんな歓迎ムードの中、MADOKA Playboysのライブはとにかく盛り上がった。ボーカルの大石みつのんが器用に様々な声を使い分けて歌いながらギターを走らせ、ベースのハッサン王子は時に叩くように力強くベースを弾く。そして、アコーディオンの新井武人は涼しい顔で、心地良くもその疾走感にあったアコーディオンの音を奏でていた。

僕はMADOKA Playboysのライブはおろか、音源すら一度も聴いたことはなかったが、彼らの音楽と会場が作り出すその熱量に押され、終わった時にはゆっくり飲もうと思って手元に置いていた酒をいつの間にか空にしていた。酒を手にしていたほとんどの人が、MADOKA Playboysが終わった時にはかなりの量を飲んだ状態ではなかっただろうか。

20分ほどのライブではあっという間に終わったが、ライブが終わった時の拍手と声援は凄まじく、そのままアンコールも行われるのではないかと思われるほどであった。

15分ほどの休憩をはさみ、Jim Kweskin & Samoa Wilsonのライブが始まった。休憩で会場の熱気は少し落ち着いたかに思われたが、多くの人は休憩中にさらに酒を飲んでいたようで、静まりかえったのはJim KweskinとSamoa Wilsonが登場する際のほんの一瞬だけ。というのも、それはおそらく登場した時のSamoa Wilsonが写真で見るよりもずっと妖艶で美しかったからで、女性も含めて会場にいたほとんどの人の視線が彼女に釘付けになってその一瞬に声が出なくなったのではないかと思う。その衣装や髪型もなまめかしくて、そこまで言うと少しいやらしく聞こえるかもしれないけれど、実際Samoa Wilsonの存在が音楽にもセクシーさを与えていて、それは今回のライブの大きなスパイスとなっていたと思う。言うまでもなく妖艶であったのはその容姿だけでなく、その歌声もハスキーがかって伸びがあり、Jim Kweskinをはじめバックの演奏ともよく合っていた。

とにかく、ライブの間、静かになる瞬間というのはほとんどなく、演奏される曲はフォーク、カントリー、ブルーズが中心なのでそこまでアップテンポで激しい音楽が演奏されることもないはずなのだけれど、始まるや足でリズムをとる人の振動で床が大きく鳴り、終始ほとんど手拍子の音が鳴り止むことはなかった。

また、ほとんどの曲で会場の前方、後方でダンスをする人がいて、そのダンスを見たSamoa Wilsonはたびたび微笑んでいた。Jim Kweskinも「次はダンサーたちのための曲だよ」と言って煽り、端の方で踊っていたダンサーたちもライブも終わりに近づくにつれ、バンドの目の前で踊るようになっていた。

Jim Kweskinのギターはさすがとしか言えないもので、リズミカルでくっきりとした綺麗な音色のピッキングはほれぼれとするもの。

「Jim Kweskin`s America」で聴いた時にも感じたことだが、そこで演奏される音楽はルーツミュージックと言ってもフォーク、カントリー、ブルーズをはじめとても幅広いもので一括りにできるものではないのだけれど、それでもそこに通底したものを感じさせるのは、長年そういった音楽と向き合ってきたJim Kweskinならではだろうと感じた。

写真で見ると一見気むずかしそうなJimだが、ステージ上では非常に気さくでサービス精神も旺盛な人であった。曲の途中、Jimはバックメンバーにソロを促し、その演奏が良かった時には賛辞の声をかけていた。実際に、バックメンバーの演奏は素晴らしく、ソロ以外でも安定していて、しかも体を揺らしながら楽しそうに弾いていたのが印象的だ。

フォーク、カントリー、ブルーズなどいわゆるルーツミュージックにはある種の敷居の高さがあって、どこから聴いたらいいかわからないし、しかも聴いてみるとそこまでの派手さがなく、最近の音楽と比べるとノリを感じづらいところもある。

だけれど、この日のライブには難しいことは何もなくて、そこにはただグッド・ミュージックがあって、観客はその音楽を聴いて自然に体が動いて踊っていた。

なにも体が動くことばかりが音楽やライブの醍醐味ではないけれど、その音楽に体が自然と反応し動くというのは何とも言えない恍惚とした感覚があって、それは良いライブだけがもたらしてくれるものだと思う。

そういった意味で、あのライブ会場にいた人はただ幸せだったのではないだろうか。

いくら古い音楽であっても、それはまさしく今そこで鳴らされていたのであり、引き継がれてきた音楽というのは演奏されるたびにそこで新しくなっていく。

200年以上前の文学が現代の人々にも共通した心情を映し出し古びることがないのと同様に、古いものでは100年近く前の曲で構成されたその日のライブもそれが演奏された時と変わらず人々を踊らせていた。(藤永康泰

 

セットリスト (提供元:トムス・キャビン)

1. 8 More Miles To Louisville
2. Oh Papa
3. Some of These Days
4. Single Girl
5. Blues In The Bottle
6. Sit Right Down + Wtite Myself Letter
7. Live + Let Live
8. Diamond Joe
9. There’ll Be Some Changes Mode
10. Separation Blues
11. Engine 143
12. Exactly Like You
13. What A Little Moonlight
14. Dark As A Dungeon
15. Sugar In My Bowl
16. Papa’s On The Housetop
17. Ella Speed

-Encore-
Angels Laid Him Away

※実際のセットリストと異なる可能性がございます。あらかじめご了承ください。